2012年6月1日金曜日

すごいぞ!レーベジェフ!

いよいよロシア絵本黄金時代の幕開けです。革命に共鳴した芸術家たちの「ロシア・アヴァンギャルド」のうねり。多岐にわたるその芸術運動の中でも、多くの芸術家が「絵本」創作に参加しました。今までのような一部富裕層のためにではなく、識字率の低い民衆や子どもたちへ、新しい時代の到来を伝えることを使命として、おびただしい数の絵本が出版されました。



ウラジミール・レーベジェフはそのうねりの中心人物であり、黄金期を牽引する旗手でした。左は我が家にある邦訳されている絵本作品です。上から『サーカス』『しゅりょう』『かんながかんなをつくったはなし』『こねこのおひげちゃん』(以上岩波書店刊)。洗練された形、明るい色使い、ユーモア、ナンセンス、躍動感…機能的でありながら温かい印象を受けます。デザイン力にも目を見張ります。見る側に立った飽きさせないページ構成力 などは、「ロスタの窓」創作の賜物なのでしょうか。



個人的にはビリービンのような装飾的「芸術世界派」の作品も好きですが、レーベジェフ作品も好きです。その理由は、簡単にいうと「垢ぬけてカッコイイ」と感じるからですね。



解剖学やするどい観察眼にうらうちされたという「本物感」=リアリティがカッコイイ、また、子どもに向けての姿勢、つまり伝えるために、事物の描き方はシンプルさを追及しつつも、決して媚びていないことがカッコイイ。



そうです。絵柄の意図が伝わることを旨としながらも、あざとさやたくらみで人目をひこうとしていないから大人が対峙して受け取るものがきちんとある。そして何よりも絵から「前向きなベクトル」を感じることは大きな魅力ですね。ほんとカッコイイ絵本!(仕方ないのですが、ロシア版原書のほうがもっとカッコイイです)



これらの作品はすべて詩人サムイル・マルシャークとの合作です。当時のサンクトペテルブルク市、ネフスキー大通りにあったシンガー・ミシンビル6fの国立出版所児童所編集部で、レーベジェフとマルシャークはそれぞれ美術と文学の顧問として、自らの創作活動はもちろん、多くの才能ある若手を育てます。レーベジェフ派が誕生し、そして後世に残る素晴らしい絵本の数々が創作されたのです。



「こどものためのグラフィックアートが、これほど真剣な芸術の試みと一致したことはかつてなかった」『ソビエトの絵本』(リブロ刊)
しかし。味方だったはずの時代の流れは、この素晴らしい絵本の隆盛を押しつぶす方向に向かうわけですね。うーん。

参考文献:『幻のロシア絵本1920-30年代』(淡交社)『ソビエトの絵本』(リブロ)『カスチョール29号』(カスチョールの会刊)

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ビリービン切手額(5柄入り)1680円
ロシア絵本「カランダーシ」







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