「バスケットの中のねこ」1929 |
「芸術新潮2004年7月号」では、黄金時代の「もうひとりの巨匠」と紹介されています。そう、ロシア絵本黄金期を牽引したレーベジェフとまさに時代のダブルセンターをつとめた絵本作家です。新しい表現力で目を見張らせたレーベジェフとは異なり、コナシェーヴィチの絵はどこか懐かしさを感じさせるディテールにこだわった描き方をしています。そう、彼の出目はビリービンと同じ「芸術世界派」なんですね。
「子どもはリアリストである。それも筋金入りの。子どもはモノを正確の、すべての特徴をもらさず描きこみ、それと同時に単純にわかりやすく描くように要求する」(「幻の絵本1920-1930年代」淡交社より)と彼自身が述べていますが、なるほど正確さと具体性に力を注いだ表現が特徴です。いいかげんなデフォルメなどもちろん、「子どもだまし」を最も嫌ったのだと思います。で、画風は異なりますが、コナシェーヴィチは、もうひとりのウラジミール、レーベジェフを物事の本質をとらえ表現する作家として認めて評価していました。
「電話」1936 |
「火事」1932 |
1本の映画、1冊の絵本。どちらもいかにして物事やお話を「実際あったもののように」表現し伝える媒体という見方をするならば、共通点があるという考え方ができますね。同じ土俵で考えたことはなかったのですが、映画の表現を絵本に積極的に取り入れるという視点が大変興味深いです。しかも、映画は絵本よりもずっと後で出てきたものです。そのように新しいものに刺激を受け、絵本制作にいかそうとチャレンジし、実績を残し、絵本の革命の一翼を担い活躍したコナシェーヴィチ。さすがです!
そして私は多くの作品を知っているわけではないのですが、その作風にとても魅力を感じています。ペンで縁取るラインからは温もりを、また色彩の選び方に優しさや品位を感じます。プラス、何んといってもちゃめっ気のようなものも感じられるのがいいですね。きちんと描かれていながら、気負いを感じさず親しみやく仕上げられている。子どもに渡す絵本にとって、それはとても大事なことです。読者へ優しい声で直接語りかけるような、そんな絵本だと思います。味わい深いです。できるならどの絵本も見てみたいですね。
しかし、しかし、やがては弾圧の黒雲がやってきて、コナシェーヴィチを追い込みます。生命は守られましたが、多くの仲間が犠牲になり、思ったように絵を描けない日々を耐えなくてはなりませんでした。そして、残念ながらそれは映画ではなく現実でした。先が見えないストーリー。そして、暗闇で覆い尽くされた時代のページをめくるのには大変多くの時間が必要だったのです。
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「プーシキン民話集/ ブィリーナ(英雄叙事詩)」5040円 |
「入り江のほとり」3150円 |