久しぶりにこのブログを書きます。
昨年の夏の終わりころから、私は絵本制作の準備にとりかかりましたが、実は、それはまた、愛犬の最後の日々と重なりました。そして、別れ。喪失感。何かを作り出してゆく作業があったことで私はきっと随分救われたのだと思っています。
1155円(税込) |
絵本のタイトルは『うさぎのいえ』。エフゲーニー・М・ラチョフの絵本です。カランダーシ初めての出版で、5月25日発行予定です。企画から全てを何とかひとりでやってきました。そして、今絵本は印刷段階に入り、カランダーシとしては一冊でも多く販売するための努力をしなければという段階。これまた、力不足に打ちのめされながら、手探りの日々は続いています。
ラチョフといえば、だれしも福音館書店の『てぶくろ』をすぐに思い浮かべることだと思います。ほかにも『もりのようふくや』『マーシャとくま』などもよく知られていますね。後に私は、それまで知らなかったたくさんのラチョフの挿絵に原書で出合う機会を得たのですが、もう、嬉しくて。
ラチョフ(1906~1997)は、シベリヤのトムスクで生まれ、父親を早くに亡くし、歯科医の母親のもとを離れ、ユージノというタイガとステップの間にある地方の祖母の元で暮らします。自然の中で、動物、鳥たちの存在を身近に感じながら成長しますが、祖母の死によりふたたび14歳で母の元に戻ります。1924年にクバン美術師範学校に入り、みっちり技術的な基礎を学びます。その後、キエフ美術大学へ進み、挿絵の仕事を始めます。
http://lucas705karandashi.blogspot.jp/2012_05_01_archive.html
http://lucas705karandashi.blogspot.jp/2012/06/blog-post.html
http://lucas705karandashi.blogspot.jp/2012_07_01_archive.html
の絵本と出合い、魅了されたと言っています。「私はレーベジェフから直接教えと受けたわけではありません。けれども、子どもの本の挿絵に対して本物の芸術に対するようにすべきだと、絵をもって悟らせてくれたのは、レーベジェフだったのです」(カスチュール11号)
しかし、一方1936年プラウダ紙によるレーベジェフ批判記事について「挿絵画家としての私の運命に決定的な影響を与えた」(カスチョール29号)として記事への肯定の意見も述べている。これはレーベジェフの絵本作りの姿勢に敬意を抱きながらも、対象の描き方、表現の仕方は相いれないねという理解でいいのだろうか。ラチョフも一時期「新しい」絵の表現に傾倒した時期もあったようですが、結局リアルに対象を描くことに戻ります。そして、やがてラチョフは、挿絵の登場動物に洋服を着せ始めるのです。(そのことについてはまた別の機会に)
ラチョフの絵は、絵本『うさぎのいえ』の命です。もともと動物民話集の中にあったひとつのお話を選んで一冊の絵本に仕立てました。レイアウトを考え、「こうしよう!」というところまでいくのに結構試行錯誤がありました。ただ、試行錯誤をしたからといってそれは何の価値があるわけではありません。出来上がったもの、それが全てです。
お話は、もともとラチョフが挿絵を寄せていたカピッツア氏の再話がもとになっています。お話の中の繰り返し部分を楽しんで、じっくり読んだあとは、劇遊びなども楽しいのではと思います。是非、次々登場する犬や狼や熊、そして鶏になりきって読んだり、演じたりしてほしいなと思います。
現時点、いろいろな思いが胸を去来しておりますが、ラチョフの新しい絵本を世に出せること、この事実にのみフォーカスすれば、本当に滋味深い人生の贈物だ!!と感謝しかないのです。
もうすぐ、発行。よろしくお願いいたします。
http://karandashi.ocnk.net/ (ネットショップ)
http://karandashi.jp (出版)