初日の国立新美術館の「バレエ・リュス展」に行ってきました。バレエ・リュスとは20世紀初頭のディアギレフ率いるロシア・バレエ団のこと。実はこの展覧会を知ったのがその初日当日の朝。ちょうど、ビリービンのことで「芸術世界派」について今週ブログでふれたばかりだったこともあり、突撃見学することに。
昼下がりの乃木坂は曇り空。湿度は高いのでしょうが、気温が低いので助かりました。でも、薄暗い展示室の中に入るとそこはもう別世界、時を経てなお華やかなバレエの衣装の数々が立ち姿で出迎えてくれます。公演ごとにまとめられて配置されている衣装たちの存在感!ディアギレフがパリを始めとする各国の観衆を驚かそう、楽しませようと仕掛けたバレエという「総合芸術」。衣装が特に重要な芸術であったことをその意匠や凝った手仕事からあらためて確認でき、納得です。本来、バレエ衣装は遠くで眺めるもの、こんなに近くでは当時の観客だって見ることはできなかったはず。近くだからこそ、大胆な手縫いの跡や、作り手の工夫や苦労?が見てとれて興味はつきません。
「青神」衣装は右端 |
で、展示されているバレエ衣装の森を歩きながら、ふと、これらの衣装が人々を魅了し続けているのは、当時のダンサーの魂と拍手喝采の記憶が布地にしみついているからなんだろうと考えてみたり。また、そもそも衣装というものは。ダンサーの肉体と合体して初めて完成されるものだとしたら、今、この衣装たちが私たちに見せている姿は、不完全で虚しいもの…というか、実際、ダンサーが着て踊った時に一番輝くんだろうな、それを見たかったなと思ったり。本人?(衣装)たちも、もう一度舞台に立ちたいって思っているんだろうなと思ったり。貴重なものだから無理だけど、回して見せたり、光を当てたりっていう展示があっても面白いかなと思ったり。
図録の付録マンガ! |
結論から言いますと、今回展示されている各公演の制作者リストの衣装デザインにも舞台美術にも彼の名前を見つけることはできませんでした。ただ、ざざーっとしかまだ目を通していない分厚い図録「魅惑のコスチューム バレエ・リュス展」の中で、今のところ、たった一か所ですが、ビリービンの名前を見つけることができました。ディアギレフが1908年に上演したオペラ「ボリス・ゴドゥノフ」についての記述で、第三幕「ポーランドの場」のデザインを担当したアレクサンドル・ブノア※(後述)が、いくつかの衣装はデザイナーのイワン・ビリービンによるスケッチを元に作ったとありました。バレエではなくオペラについての記述ですね。
ブノアの絵本より |
それで、先ほどの※アレクサンドル・ブノワ!ですが私としては絵本画家として知っているアレクサンドル・ベヌアと同一人物だと初めわからなくて、図録で知ってびっくり。(ロシア人の名前の呼び方って…しかし何故にブノア?)芸術世界派の主要メンバーとは知っていましたが、バレエ・リュスで衣装デザイナーとしてこんなにも活躍していたとは。しかも、ビリービンとオペラの衣装についてやりとりをしていたことが今回わかったわけです。
ロシアの絵本・カランダーシ
0 件のコメント:
コメントを投稿