2015年10月2日金曜日

カランダーシのロシア旅④(ロシア国立子ども図書館を訪ねて)

この建物の一部が図書館
 国立子ども図書館訪問。国立でなくてもよかったのだけど、児童図書館には行ってみたかった。ある国に行った時、動物園と図書館を見れば「何か」が分かると思う気がします。(私のように、主要観光スポットをすっ飛ばしていきなり訪ねる場所でもないのかもしれませんが)でも、ロシアの子どもと家族の様子を見るのが旅のテーマだし、子どもと本との関わりも見てみたかったので、図書館行きは私にとってマスト。かなり楽しみでした。

 ですが、「あれ?なんだか、期待していたイメージと違う」というのが、地下鉄の駅を降り、図書館の建物の外観を見た瞬間の私の反応です。大きな集合住宅の一部が図書館だということで、外見はちょっと無愛想だなと思った次第。でも、近づくと、サイトで見ていたおなじみのマークのついた扉があるし、さあ、いよいよ入館です。

入口。図書館のマーク
 とは、簡単にはいかない。まず入ると、広いロビーのような場所があり、左手にオープンロッカースペースがあり、ハンガーにコートをかけ、大きな荷物などを置くようになっています。特に番号札などはありません。で、正面は入館ゲートですが、ICカードをタッチしないと入れない仕組み。新参者は必要書類に記入して、右手の受付の(審査)をパスしなければ中に入れないのです。今回は通訳としてMさんに同行していただいていたので、書類記入、(審査)も無事終えて中に入れましたが、一人だったら、どうしたでしょうね。受付には年配の婦人が2人いて、ちょっと厳しそうですし、実際、学生の書類の不備をぴしぴし指摘していました。(審査)とは大げさかもしれませんが、身分証明書の提示、書類のチェック、最後に顔写真を撮られます。で、晴れていただいたカード。裏面に名前、生年月日などが記載されています。

吹き抜けホール
まず、ゲートを入ると広い廊下があり、正面に小規模なホールが見えます。そして、この廊下は展示スペースにもなっており、「戦後70年」というテーマで壁もペインティングされていましたし、ガラスケースには関連書籍、突き当たりのホールでも関連の展示やシュミレーション映像などが流れていました。結構、力が入っている感じです。ホールは吹き抜けで、子どもたちは映像の前に集まっていました。児童図書館の児童としての対象年齢は確か18歳まで。ですから、展示も幅広い年齢層に向けて、ということになります。

 と、ここまでは共有スペースですが、ここからは、ホールの周りにある年齢で区切った個別の部屋を訪ねます。まずは、05歳小さい子たちのためのお部屋です。優しい、家庭的な温もりのある雰囲気です。窓からは木々の緑。カーペット、ぬいぐるみ、民芸品のホフロマ塗りの小さな椅子、丸いソファ、手造りのペチカ。ここの本は貸し出しできません。ここにある本はここで読むため、または読んでもらうためのものです。書棚を見るとラチョフの動物民話集がありました。本を開くと手書きの図書カードが。1972年刊の本など、昔からの本がたくさんあります。
小さい子たちの部屋
 次は0歳~10歳のための部屋で、今度は借りられる部屋。私たちが行ったのはその後、6歳~10歳の借りられない部屋、11歳~高校生以上の借りられる部屋、あとは、自然科学の部屋、文芸書の部屋、海外の本の部屋などです。他に音楽の部屋、集会などができる部屋などがありました。

 6歳~10歳の部屋は、白を基調とした明るくモダンな感じで、テーブルにペンが置いてあります。この図書館は入るときは結構大変だと思いましたが、中に入ると意外にも撮影はオッケーです。11歳以上の部屋は窓側に読書スペースもあり、日本の漫画もありましたし、キラキラな表紙のローティーン向け青春小説などもあり、硬軟取り混ぜている感じです。自然科学の部屋は、分野ごとに棚が分かれていてとても本が探しやすくなっており、文芸書の部屋には、村上春樹の本、ロシア語の日本昔話などもありました。それぞれの部屋には受付があり、司書(資格を持っているのかどうかわからないが)の婦人が大体ひとりからふたりいて子どもたちの相談にのったり、本を探してくれたり。私も探しているテーマの本があったのでお願いしたのですが、親切に教えてくれました。で、文芸書の受付には、鳥かごが置いてあり、実際小鳥を飼っておりました。

6歳~10歳の部屋。明るい
 最後に訪ねたのが、外国の本がおいてある場所。英国、フランス、中国、トルコ、日本、スペイン、イタリア、ドイツの本が置いてあるということでした。国別に書棚が分かれています。日本の棚にはおなじみの絵本が並んでいました。たくさんの部屋を見ましたが、実は一番印象に残ったのはこの部屋でした。

外国語の本の部屋
 その日本語の絵本の棚を見たときは、嬉しかったですね。そんなに日本から離れていたわけではないけれど、懐かしいというのも変なのですが、日本語を見るだけでほっとしたんですね。ですから、遠く日本を離れてモスクワに赴任している日本人の家族たちにとって、ここはきっと大切な場所であろうことは想像できました。各家庭にも、日本人学校にも日本の書籍はあるでしょう。でも、街の児童図書館にもある!このことは当事者たちにとって決して小さいことではない。そう思ったわけです。

 ページをめくるとロシア語訳が簡単な紙で貼ってあるものも。これも必要な人、子どもにとって、ありがたいことでしょう。司書の方にうかがうと、やはり各国からモスクワに赴任しいる家族、そして各国の言葉を習得しようとしている人がこの部屋を利用すると言っていました。この図書館の界隈は日本人が多く住んでいるエリアだそう。この図書館のこの部屋、この本棚を大げさかもしれないけれど、ひとつの拠り所としている家族や子どもがいるのでは、などと想像しました。知らない国で、その国の図書館に迎え入れられていると実感できたら、それはきっと大きな励ましになるのではないかな。
入館カード

 この図書館は、外観はいかつかったけれど、中はソフトでリラックスできる場所でした。中に入る時のセキュリティは厳しいようにも思いましたが、そのことで子どもたちの安全が守られているわけで、滞在していて安心感は感じました。と言いつつ、廊下の天井の電気工事を柵も注意書きもなくやっているのを見ると、危なくないのかな、と心配になりましたが。

 構造的には、ホールが家の家庭のリビングのような位置づけで、その周りに年齢に合わせた個室がある、みたいとも思えるけれど…そうですね。全体の印象は「家庭的な学校」みたいな感じでしょうか。本を探したり、読む場所であるけど、もうちょっとアクティブな雰囲気。アカデミックな場所だけど堅苦しさはあまりないですし、明るいですし、私は居心地がよかったです。


 そして、今回の図書館見学で来てなんだかとても嬉しかったこと、それは、同行していただいたMさんが、今回来てみてとてもいい場所なので、今度は必ず子どもと来たい、と話してくださったこと。そう、きっと親子で、家族で楽しめる「場所」になると思いますね~。カフェだってありますし!






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