2014年8月22日金曜日

ボンジュール!フランスのビリービン


 このところ、ずっとビリービンのことを書いているので、たまには別のテーマのことも書こうかな(書きたい…)などと思っていました。でも、今回も、ビリービン!

 

うらわ美術館で開催中の「ボンジュール!フランスの絵本たち」展。フランス絵本の代表的存在、カストール文庫についてはいろいろ知りたいと思っていたので出かけました。ロジャンコフスキーなどは有名だけれど、ロシア絵本の影響というのをどんな感じで紹介しているのか興味もあったので。

 

 カストール文庫創始者のフォシェは、教育においての絵本の重要性を唱え、黄金期ロシア絵本も参考に、ロシアや東欧の作家を起用して新しい絵本作りを始めました。最初の絵本が工作絵本というのも興味深いのですが、これもロシア絵本の手法にならったもので作家もロシア人のナタリー・パラン。

 

 そのナタリー・パランの作品には、ロシアアヴァンギャルド絵本の系譜がみてとれます。その新しくて明るいのびやかな表現は、本国ロシアでは終焉を迎えざるをえなかったわけで、それが、こうしてフランスの地で受け継がれて花開く…絵本を通してあらためて歴史の流れに思いをはせました。そう、その時代、多くのロシアの芸術家がヨーロッパに亡命していました。

 

ナタリー・パラン画(図録より)
 先述したロジャンコフスキーもその一人ですが、実はビリービンもそうだったんですね。そして、カストール文庫にも参加していたのです。そのことを知ってはいたのですが、どんな絵本を作っていたのか、その実際は知りませんでした。もしかすると郷に入れば郷に従えではありませんが、画風をアレンジするようなこともあったのかな、など勝手に思ったりもして、いつかはそのことについても知りたいと思っていました。

 

 そうしたら、展示されていたんです!カストール文庫におけるビリービン絵本の原画が!冷静に考えたら確かに展示されていてもおかしくはないのですが、個人的に全然期待していなかったので、ちょっと勝手に驚いてしまいました。それに、印刷された初版本は見たことはありますが、原画は初めてです。ちょっと感動です。

 

ビリービン画(図録より)
展示されていたのは「小さい金の魚」。こてこてのロシア民話です。画風もあのビリービンそのもの。ああ、ビリービンはどこに行ってもビリービンなのでした。
 

 特に感激したのは、原画5枚の中の1枚、表紙の試作です。(これは残念ながら図録には掲載されていません)ラフな図柄に鉛筆の下書きも生々しいではありませんか。へえ、何だか嬉しい。完成品を畏れ多く見てきた者としては、初めて人間ビリービンを垣間見たような気さえしたわけです。
 
 
 そう、何んといいますか、気分は、ボンジュール!ビリービンっていう感じでまじまじとしばらく原画と向き合いました。
 
 
 暑い暑い昼下がり。出かけていった甲斐あり!でした。

 
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ロシアの絵本・カランダーシ